「ウェブアクセシビリティ」はもはや新しい概念ではありませんが、その重要性は日に日に増しています。かつては政府のウェブサイトに限られていたアクセシビリティの要件が、今や民間のウェブスペースにも求められる時代です。障害者差別解消法の改正は、私たち全員にウェブサイトの設計と利用のあり方を再考する機会を与えています。アクセシブルなウェブサイトを実現するための基礎知識、取り組むべきポイント、そして参考となるガイドラインを一緒に見ていきましょう。
ウェブアクセシビリティの新時代:私たち全員の使いやすいウェブへ
ウェブアクセシビリティが民間企業にも求められる現代。これは、ただ単に公的機関の範疇から拡がっただけの話ではありません。障害者差別解消法の改正を機に、ウェブサイトはすべての人にとって利用しやすいものであるべきだという社会の要求が反映されています。では、ウェブアクセシビリティとは何か、その意義と具体的な取り組みについて、わかりやすく解説します。
ウェブアクセシビリティとは何か
ウェブアクセシビリティという言葉を耳にする機会は増えていますが、その本質についてはまだ理解されていない部分が多いです。総務省の資料によると、ウェブアクセシビリティとは「全ての人がウェブページを問題なく使えること」を指します。これは、情報の公平なアクセスを保障するための重要な要素です。
ウェブアクセシビリティの必要性
情報は現代社会の生活において不可欠です。インターネットが普及した今、情報へのアクセスはさらに重要性を増しています。しかし、視覚障害や読字障害を持つ人々にとって、ウェブ上の情報へのアクセスは困難です。ウェブアクセシビリティの向上は、こうした人々にとっても情報への門戸を開くために不可欠です。
ウェブアクセシビリティ義務化の背景と法律
2021年の障害者差別解消法の改正により、ウェブアクセシビリティの民間企業への義務化が始まりました。この法改正は、障害を持つ人々への合理的な配慮を義務づけるものであり、その影響はウェブサイトの設計にも及んでいます。
現状と今後の課題
総務省の報告書によれば、多くの企業がウェブサイトを運営しているにも関わらず、ウェブアクセシビリティに準拠しているのはわずかな割合です。今後、すべての企業がウェブアクセシビリティを考慮したウェブサイト設計を進めることが期待されます。
ウェブアクセシビリティの重要性と義務化の流れを理解することで、誰もが平等に情報を享受できる社会を実現するための一歩を踏み出せるでしょう。
ウェブアクセシビリティ診断:あなたのサイトは大丈夫?
ウェブアクセシビリティへの対応が各企業にとって必須の取り組みとなりつつあります。多くの企業が義務化に向けて対応を進めている中で、自社の取り組みレベルを知ることは重要です。以下では、ウェブアクセシビリティ向上に向けた実践的なステップをご紹介します。
現状把握から始めよう
まずは、自社サイトがウェブアクセシビリティの基準を満たしているかの確認が必要です。全ての対応を一度に行うのは難しいため、段階的に取り組むことが肝心です。
具体的な取り組みとその重要性
ウェブアクセシビリティを高めるためには、具体的な手段を踏まえた取り組みが求められます。自社サイトの構造やデザインを見直し、全てのユーザーが使いやすい環境を整えることが重要です。
ウェブアクセシビリティ向上のためのチェックリスト
以下のチェックリストを用いて、自社サイトのウェブアクセシビリティの取り組みレベルを診断しましょう。これは総務省の資料を基に作成したもので、ウェブアクセシビリティの向上に役立ちます。
自社サイトの取り組みチェック
- コンテンツの対象範囲の理解
- ガイドラインの策定と公開
- 従業員への研修実施
- 改善取り組みの実施
- 取り組みの評価と検証
- 利用者からのフィードバック収集
診断ツールと専門サービスの活用
「miChecker」のような簡易評価ツールや、BIPROGYチャレンジド株式会社のような専門のウェブアクセシビリティ検査事業を利用して、自社サイトの評価・改善を進めることも一つの方法です。これらのサービスを通じて、専門的な知見を得ながら、より実践的な改善を図ることができます。
ウェブアクセシビリティの義務化は、すべての人にとって使いやすいウェブ環境を実現するための一歩です。現状を正確に把握し、必要な改善を進めていきましょう。
ウェブアクセシビリティの理解と実践のためのガイド
ウェブアクセシビリティを高めるためには、規格やガイドラインを理解し、それに沿ったサイト設計が重要です。以下に、実践に役立つ基本的なガイドラインを紹介します。
JIS X 8341-3:2016の基本原則
知覚可能の原則:
- 代替テキストの提供
- 時間依存メディアへの字幕の追加
- 音声解説または代替コンテンツの用意
- 明瞭な色の使用
操作可能の原則:
- キーボードのみでの操作
- 操作時間の調整
- 閃光や点滅の制限
理解可能の原則:
- ページの言語の明示
- 予測可能な動作
- エラーの自動検出と説明
堅牢の原則:
- クロスブラウザ互換性
主なガイドラインとその内容
- みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版): 公的機関のウェブアクセシビリティの実践方法を網羅的に解説。
- ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン: 方針を策定する際の必須事項を明記。
- JIS X 8341-3:2016 対応度表記ガイドライン: 対応度の表記基準と方法を解説。
- JIS X 8341-3:2016 対応発注ガイドライン: 発注時の要件としてのアクセシビリティ対応を説明。
これらのガイドラインは、ウェブアクセシビリティの基盤となります。まずはAレベルの達成を目指し、その後、さらに高いレベルへの対応を進めていくことが推奨されます。詳細については、WCAG 2.1 解説書や、ガイドラインに記載されているリンクを参照してください。各ガイドラインの詳しい内容は、リンク一覧にて確認することができます。これらの知識を活用し、より使いやすいウェブサイトを目指しましょう。
まとめ
私たちは、多様性が豊かな社会に生きています。そこでは、あらゆる特性を持つ人々が、自宅や持ち歩くスマートフォンから、必要な情報にアクセスできるような環境を整えることが不可欠です。これには、施設のバリアフリー化、点字や手話の利用だけでなく、インターネット経由での情報交換の容易さも含まれます。
サイトの使いやすさを高めるために、チェックツールや支援サービスを駆使し、ウェブアクセシビリティの保持と向上に努めることが求められています。最終的には、誰もが障害なく情報にアクセスできる社会を目指すことが重要です。