ウェブアクセシビリティは、障害の有無や年齢にかかわらず、全ての人にウェブサイトやアプリケーションへの平等なアクセスを保証するための重要な取り組みです。このブログでは、ウェブアクセシビリティの概念からその社会的意義、法的変化、そして企業にとっての価値までを詳しく解説します。2024年の障害者差別解消法改正を控え、企業はウェブアクセシビリティへの対応を急がなければなりません。ここでは、ウェブアクセシビリティの基本から、その対応策、さらには未来のトレンドまでを5分で網羅的にご紹介します。ウェブアクセシビリティが企業の持続可能な成長と社会的責任を果たすための鍵となる理由を、ぜひご一読ください。
そもそもウェブアクセシビリティとは?
ウェブアクセシビリティという概念
ウェブアクセシビリティとは、障害の有無や年齢にかかわらず、誰もがウェブサイトやアプリケーションを利用できるようにするための設計、所謂「Webのバリアフリー化」です。
ウェブアクセシビリティを実現することで誰もが情報に公平にアクセスできる状態になります。
障害者や高齢者が総人口のおよそ3分の1を占める日本では、特に重要視されるものになります。
今後も障がい者や高齢化が予測されている現代、数年後には「ウェブアクセシビリティは当たり前」の時代が間違いなくやってくることでしょう。
国際標準化機構(W3C)によって定められた「WCAG」が、ウェブアクセシビリティを定義する基本のガイドラインとなっており、日本では「JIS」がよくガイドラインとして利用されます。
SDGsとウェブアクセシビリティ
SDGsの目標10「人や国の不平等を無くそう」には「誰一人取り残さない」という原則があります。この原則は、ウェブアクセシビリティの理念と一致しており、情報へのアクセスの平等を推進しています。
ウェブアクセシビリティにすでに取り組んでいる企業の多くは、SDGsやESG経営の取り組みとして自社ブランドの向上を図っています。
2024年4月の障害者差別解消法改正
法改正の概要とウェブアクセシビリティへの影響
2024年の4月1日に障害者差別解消法が改正されます。
この改正において押さえておくポイントは、
「全ての事業者に対して、合理的配慮の提供が法的に義務付けられる」このひとつです。
これまでは、公的機関に限定されていた合理的配慮の提供が、民間事業者にも法的に義務付けられるようになりました。
「合理的配慮」の義務化と事業者への影響
合理的配慮について解説します。
障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)では下記のように述べられています。
「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
英語ではreasonable accommodationといいます。
障害者権利条約の定義から考えると、合理的便宜・調整といった意味合いで考えることが妥当でしょう。
合理的配慮は、社会的障壁によって生まれた機会の不平等を正すためのものです。
例えば、車いす利用者は階段しかないお店を利用しようことは困難です。
このとき車いす利用者は、お店を利用できないという機会の不平等に直面します。
そして、階段しかない入口という障壁を作っているのは事業者側です。
障害を作っているのが事業者側であるとすれば、その原因を取り除くのは障害者自身が努力・工夫すべきことでも、事業者が思いやりでやるものでもなく、事業者の義務です。
合理的配慮の提供の義務化は、ウェブアクセシビリティにも影響します。
これまではスロープや点字ブロックなどオフラインでのバリアフリー化が進んでいましたが、障がい者でも高齢者でも半分以上が、PC・スマートフォンを使う現代、合理的配慮の提供の範囲はオンライン「Webページ」にも広がります。
障がい者や高齢者が利用しやすい、健常者と同様に情報にアクセスできるWebページを提供することは民間事業者の義務となるのです。
ウェブアクセシビリティ対応の実践事例とリスク管理
訴訟リスクへの備えと海外事例の教訓
ウェブアクセシビリティに対応しないことは、訴訟リスクを高めます。米国では、アクセシビリティが不十分なウェブサイトに対して障害者が訴訟を起こし、企業が罰金を支払う事例が増加しています。
2015年には57件だったウェブアクセシビリティに関する訴訟が2021年には4,195件にまで急増しています。海外にも販売を展開している日本企業が訴訟を起こされたケースもあります。
海外で販売展開している企業の担当者は、明日は我が身かもしれません。
早急にWebサイトのウェブアクセシビリティを確認してみてください。
自社サイトの対応状況の確認方法
では、どのようにWebサイトのウェブアクセシビリティを確認すればよいのでしょうか。
自社サイトのウェブアクセシビリティ対応状況を確認するには、まず「WCAG」のガイドラインを基準に自己評価を行います。その後、専門の監査機関による評価や、障害を持つユーザーのフィードバックを取り入れることが有効です。
また「miChecker」というツールも有効に活用しましょう。
「miChecker」は、国や地方自治体などのホームページが誰にとっても利用しやすいものになっているのかチェックできるよう、総務省が提供しているWebアクセシビリティ評価ツールです。
miCheckerはWindowsのみ提供されており、iOSなどの他のOSには対応していませんので注意してください。
参考:
[「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)」及び「みんなのアクセシビリティ評価ツール:miChecker Ver.2.0」の公表|総務省] (http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu05_02000074.html)
情報アクセシビリティの確保|総務省
[Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0] (http://waic.jp/docs/WCAG20/Overview.html)
まとめ
ウェブアクセシビリティの社会的責任と企業価値
ウェブアクセシビリティは企業の社会的責任(CSR)として重要視されています。全てのユーザーに平等なアクセスを提供することで、企業は信頼とブランド価値を高めることができます。
またウェブアクセシビリティは、検索エンジン最適化(SEO)にも貢献します。アクセシビリティの高いウェブサイトは、検索エンジンによって「利用しやすい」と評価され、検索結果での上位表示につながることが多いです。
画像の代替テキストやリンクに識別可能な名前をつけるなどの対策は、ウェブアクセシビリティにもSEOにも有効な手段といえます。
今後のウェブアクセシビリティの動向と企業の対応計画
今後もウェブアクセシビリティは浸透し続けるでしょう。企業は新たな技術の導入や法規制の変更に柔軟に対応し、継続的な改善を行うことが必要です。
ウェブアクセシビリティは、企業が取り組むべき重要な課題です。その実践は、社会全体の包括性を高めるだけでなく、SEO対策としてのメリットももたらし、企業価値を高める効果があります。今後も技術の発展や法的要件の更新に伴い、ウェブアクセシビリティは企業の持続可能な成長戦略の中核となるでしょう。